ZOZO離れの今、ZOZO ARIGATOの早過ぎる終了…意外な方向に変貌していくこれからのZOZOのカタチ…?
ZOZO離れの今と、ZOZO ARIGATOの早過ぎる終了…
2019年年頭から突如として始まったアパレルの「ZOZO離れ」…。
原因はZOZO側の「ZOZO ARIGATO」という新サービスにありました。
これは比較的低額な月額料を支払うと新作を含む全てのアイテムが10%OFFで買える!というもの。
この割引分はZOZO側が負担するということではあったらしいのですが、セールでもないのに恒常的に安く売られてしまうことを嫌った複数のブランドがZOZOTOWNを離脱。
そしてこのニュースが、ZOZOの社長前澤氏がお年玉として100万円を配るなど、ZOZOのニュースバリューが高まっていた時期もあって、大々的に報じられてしまいました。
(これは流石に想定外だったようですね…。)
その後前澤氏がTwitterを休止したこともあって、お年玉企画から続いたZOZO関連の喧騒も落ち着いてきた感がありました(この後紹介するニュースが来るまでは…)。
もっとも、上記記事でお伝えした「ベイクルーズグループのサイレントZOZO離れ」など既存のZOZO離れは今もって継続中。
相変わらず新作はZOZOにはアップされず、セール品のみが並んでいます。
全面撤退ではないので、メディアも大きく報じてはいませんが、こうした「静かなZOZO離れ」は、確実に起こっています。
取扱の全面停止、はしていなくとも、ZOZOでの取扱点数をかなり減らしているブランド・ショップも見受けられます。
一方で、メディアが報じた「NIKE・NORTH FACEの全面撤退」は今の所どうなるか不透明。
正直なところ、両者ともに現在のブランド価値を牽引しているよう人気品番や限定モデルはZOZOではほぼ買えないので、別に撤退しなくても良いのでは…?と思うのですが。
また「ユナイテッド・アローズがZOZO離れ」と報じられた件も、正確に伝わっていないところがあるように思います。
ユナイテッド・アローズ系列の公式オンラインショップは、ZOZOの子会社が現在運営しているそうですが、在庫は実質的に共有しています。
ZOZO側の在庫として持っている分を売り尽くすとユナイテッド・アローズ側の在庫からの取寄扱いで販売することが出来ます。
従って、あるアイテムがZOZOで完売となるとユナイテッド・アローズのオンラインショップの方でも完売になってしまうんですね。
当然ZOZO ARIGATOで10%割引を受けたほうが、圧倒的にお得ですから、ユナイテッド・アローズのオンラインショップはその存在価値がほとんど無くなってしまっていた状態なのです(実店舗の在庫確認など独自の機能もありますが)。
どうやらこれを完全に分離してしまう、ということのようですね。
ユナイテッド・アローズグループはZOZOTOWNでの販売も、引き続き行う意向のようです。
ZOZOTOWNに出品する意味というのは、ZOZOTOWNで売りたい、というのももちろんありますが、ZOZOTOWN経由で自社オンラインショップにも訪れてもらい、そのブランドに引き込む、といった宣伝効果も期待しているところでしょうから、ZOZOTOWNのみで売り切れてしまう現状は変える必要が当然あるのでしょう。
そして、そうこうしているうちに、GWを間近に控えた昨日4月25日、ZOZOが突如としてZOZOARIGATOの5月いっぱいでのサービス終了を発表。
同時に新規入会も停止され、現在既存会員以外は入会出来ないようになっています。
年間会員として、1年分の会費を既に支払ってしまった場合は、年会費(3,240円)の決済を全額取消した上で、サービスを利用した月分の会費(270円/月)を算出し、再請求されるようです(クレジットカード払いの場合)。
いやーまさか年会費の「払い戻し」をしてまで、このサービスを終了するとは思ってもみませんでした…。
ZOZOARIGATO終了で、ブランドは戻ってくる!?
ZOZOARIGATOが半ば強引に導入された際の大義名分は、単なる割引サービスではなく、割引分を各団体に寄付出来るという割引と寄付が一体となった新しいコンセプトにありました。
ただ、ZOZOARIGATOの終了告知ページによると、寄付金額は3000万円と、ZOZOの売上を考えるとちょっと寂しい数字に…。
寄付に関しては、やや唐突過ぎた感があり、ZOZOのサービスと全く繋がりが無かったりと(せめて各団体の活動と何らかの関連性を感じる仕掛けがあれば…)「ZOZOARIGATOで割引を行う上での大義名分」でしかない感も否めず…。
この点においても、上手くいかなかった印象があります。
ただ1消費者として見た場合、ZOZOARIGATO自体は優れたサービスであったと今も思います。
ポイントによる実質的な割引、ポイントカードでポイントを貯めることによる割引など、様々な割引特典を設けているショップは多いものですが、分かりやすく最初から1割引します、なんてサービスが一番嬉しいに決まっています。
他サイトよりZOZOを使う明確なメリットになっていました。
ただ、それで取扱ブランドがどんどん離れて行ってしまっては本末転倒なのも事実。
以前も述べたように、ブランドは自身のブランドイメージをやたら気にしますし、目に見えにくい商品環境にひたすら神経質になる、要するに生息する「環境」を求める生き物ですから。
適さない環境では簡単に死んでしまう生き物なのです。
(そしてたまに「トレンドの波」にも飲み込まれて、弱ったり死んでしまったりもします…。)
個人的には、「ウチはそういうの気にしないですから」というスタンスのブランドの方がより消費者としては好感を抱きますが、好き嫌いよりもブランドというのは「そういうもの」ですから仕方がない。
これから消費税が予定通り上がったら、各セレクトショップは10%OFF程度のミニセールを乱発してくると見ているのですが、それだって各セレクトショップが自分たちのタイミングで独自に仕掛けたいものでしょうし。
そして、ZOZO離れしたブランドがZOZOARIGATO終了で戻ってくるか?と言うと、これもまた不透明。
ベイクルーズグループなどは、元々ZOZO依存度が低かったこともあって、良いタイミングでの離脱を狙っていたような気もしますし。
ZOZO離れの流れはこれで確実にゆるやかになるとは思われますが、大きな流れとして「ZOZO離れ」の方向性がやはりあるように思っています。
意外な方向に変貌していくこれからのZOZOのカタチ…
ZOZO離れを受けて、ZOZOはこれからますますPB(プライベートブランド)に注力していくようになるのではないか…?と予想していたわけですが、どうやらちょっと違う方向性を見出している様子。
PBは昨年までの自前主義を見直します。この1年は当社の商品企画力のなさを痛感しました。来期はゾゾスーツで得た100万件以上の体形データを活用。ユーザーの体形に応じた多サイズ展開での販売プラットフォームをブランドに開放し、ブランド企画のアイテムを開発・販売し、「顧客ニーズの多様化」に応えます。
PBの数値を初公開すると、この1年弱でスリムテーパードデニムパンツは約21万本、無地Tシャツ約7万枚を販売しました。適切な価格と個客の体形に合った「マルチサイズ」展開で、ここまで数量が売れる。来期はPBで得た体形や多サイズに関するノウハウをブランドに公開します。
つまりゾゾタウンは、今までの単なるECプラットフォームから、物作り・MD支援なども提供できる新しいプラットフォームへ進化します。ブランドには定番品やシーズンアイテムを30~50サイズの多サイズで作ってもらい、1品番で1万~10万枚売ることを目標とします。
(繊研新聞 電子版
ゾゾ前澤社長が語る「ZOZOARIGATO」の真相と新戦略㊦ | 繊研新聞
より引用)
つまり純粋な「ZOZO」のPBブランドではなく、取引ブランドにZOZOの持つ顧客の体型についてのビッグデータの分析結果を提供し、そうしたブランドに他サイズ展開のアイテムを作ってもらい、ZOZOで販売する…という流れになりそう。
この話の前に前澤氏は、実店舗とECを両方運営しているブランドではなく、「店舗を持たない、ECでの販売を主流とするブランド」の時代が到来したことを強調しています。
現在業界のEC比率は約10~20%程度と想定しますが、これが30~40%程度になれば、過剰在庫が減り、セール過多問題の解消も進むはずです。これまでECは店の脇役でしたが、「EC主体のモデルこそアパレル業界に必要なこと」と堂々と主張していくべきタイミングを迎えたと思っています。
今ゾゾタウンでは店舗を持たないネット専業ブランドが目覚ましく成長しています。ゾゾタウン出店ブランドの全体の売り上げ成長率(前年対比)が約20%なのに対し、ネット専業ブランド売り上げ上位5ブランドの成長率は74%で、平均売り上げは16億円超になっています。
これらブランド・企業は「ゾゾタウンで売れること」に集中・研究し、特に若年層のお客様に人気。たった数枚の商品写真でも服を購入できる若い顧客が確実に増えています。
また、ネット専業なので、店舗経費も過剰生産もなく高効率で、いい商品を低価格で販売できる。まさに新時代のブランドです。
(繊研新聞 電子版
ゾゾ前澤社長が語る「ZOZOARIGATO」の真相と新戦略㊤ | 繊研新聞
より引用)
つまり、ZOZOと協業していくブランドは、ZOZOを離れたがっているような私たちのよく知るブランドではなく、まだよく知られていないEC専門ブランドになるようなのです。
ZOZOTOWNは、「実店舗を持つ大手・有力セレクトショップを集める」ことをどこよりも早く達成することにより、成功してきました。
しかしZOZOTOWNは、今はどうやらその延長線上に勝算はないと見ているのではないか?
と上記インタビューからは見て取れます。
数年前、前澤氏はZOZOTOWNで買えないブランドが無いようにしたい、誰もが知る世界の有名ハイブランドも買えるように…と夢を語っていましたが、今後は「ZOZOTOWNで買えないものはない」品揃えを目指すという方向性ではなく、「ZOZOTOWNでしか買えない」モノづくりの方向性に進んでいきそうな気配です。
そしてそれは多サイズ展開のための大量生産品・低価格といった方向性でもあるでしょう。
ファッション上級者はZOZOを使わなくなる?
誤解を恐れずに言えば、いわゆるそこそこのお値段をするブランドが好きで、ファッション上級者と言われるような人達は、実はサイズにそこまでシビアではないではないか?という印象を持っています。
ここで言うシビアではないというのは、MサイズとLサイズ、どちらが良いか迷う、というレベルでの迷いは当然あるとしても、その先のサイズ展開を細かく何十というバリエーションにすることまでは望んでいないのではないか?という意味です。
近年のビッグシルエットや、ゆったりとした服のブームで余計に、「サイズは大まかには気にするけれど完璧に『ジャストフィット』することまでは求めていない」ように思えるのです。
そんな人達に支持されている、現在の勝ち組ブランド達はZOZOの多サイズ展開にはとりあえずは乗らないでしょう。
(そうしたところは、ZOZOの多サイズ展開のための大量生産品・低価格路線とは真逆ですし。)
元々数年前のタイトフィットを至上とするようなサイズ感のトレンド、そして現在のゆったりとしたサイズ感のトレンドも、その時々の勝ち組ブランドが作り出したようなものです。
勝ち組ブランドはトレンドの「サイズ感」すらコントロールし、作り出してしまうものです。
それに、そうした勝ち組ブランドは、今後どちらかと言うとZOZOを離れる方向性に行くでしょうから。
となると、そうしたブランドを支持する人達もZOZOを使わなくなる、ますます「勝ち組ブランドになるために宣伝の意味を兼ねてZOZOに出品する」という流れも無くなるのではないでしょうか。
そうした流れが本当に消費者のことを考えているのか?と言い出すと、どうなのかな?と思いますが、ブランドは時に消費者の利便性よりも「ブランド価値」を優先させる生き物なので、これもやはり仕方無いのかもしれません。
ZOZOTOWN以外のサイトを使うしかなくなる未来、他サイトの現状は?
現状はZOZOARIGATOなど他サイトより明らかに優位性・メリットを消費者に与えてくれるZOZOTOWNですが、今後は「ZOZOTOWNには取扱が無いから他サイトで買うしか無い」という事態になることが予想されます。
そこで有名セレクトショップのECサイトはどうなっているのか、ちょっと見てみましょう。
ベイクルーズグループ
EDIFICE、ジャーナルスタンダードといった傘下の有名セレクトショップはもちろん、低価格帯のB.C STOCK(ベーセーストック)やバイヤーのこだわりを存分に反映したちょっと尖ったセレクトを見せるL'ECHOPPE(レショップ)のアイテムなども一部取り扱っています。
質・量ともに大手のセレクトショップグループが単体で運営するECサイトではトップクラスの品揃えでしょう。
またZOZOのように「WEAR」のユーザー着用写真は使えませんが、様々な体型のショップ店員の着用写真を載せてくれるため、サイズのイメージも掴みやすい。
そして商品の返品は商品の到着から「10日以内」なら可能。
ZOZOよりも優位性がある点としては「セール品でも返品可能」という点です。
さらに実店舗とオンラインのポイント制度(1ポイント=1円)が共通で、実店舗で買って得たポイントをオンラインで使ったり、逆にオンラインで買って得たポイントを実店舗で使うことも可能。
これによって、わざわざポイントのためにオンラインで買う、またその逆などの不合理な判断をしなくて済みます。
ベイクルーズグループがZOZO離れを行ったのは、このベイクルーズストアをトップレベルのECサイトに育てたい、という意向もあったのではないでしょうか。
やや惜しい点としては、各セレクトショップの世界観を伝える仕組みが無く、「ごった煮」の印象を受けるところ。
各アイテムページから各セレクトショップのオフィシャルHPには飛ぶのですが、ブログなどへは飛べません。
例えばレショップなどはバイヤーの着ぶくれ手帖などでの商品解説にそのまま飛べれば良いのに、と思ってしまいます。
また、ショップごとのカテゴリー分けはあるのですが、ブランドごとのカテゴリー分けは無く、検索にブランド名を打ち込まないとブランドごとに商品を見ることが出来ません。
これちょっともったいないですね。
また店頭在庫から「取り置き」をして、店頭で実際に見てから購入する、というシステムもあるにはあるのですが、かなりのアイテムが「取り置き不可」となっていて実際にはほとんど機能していません。
ビームスグループ
全て「ビームス」という名称が付されているのでなかなかイメージしにくいものの、多くのカテゴリー別セレクトショップを抱えるビームスグループのECサイト。
こちらも実店舗のポイント制度「BEAMS CLUB」 とオンライン上の 「BEAMS Online Shop」のポイント制度が既に統合されており、実店舗・オンライン両方で共通したポイントを貯める・使うことが出来ます。
ベイクルーズではほとんど機能していない取り置きによる試着サービス制度も手厚く、ほとんどのアイテムで使えるようです。
返品については商品の到着から「7日以内」に返品の連絡をし、かつ商品の到着から10日以内であれば可能。
ブランドごとにカテゴリー分けもなされていて、この点は非常に便利です。
ナノ・ユニバース
「ZOZOTOWNとともに発展してきた」と言えるのがナノ・ユニバース。
自前のオンラインショップでは、「ナノ割」という、独自サービスを行っています。
これは商品の予約スタートから通常販売までの間に予約をすると、10%OFFで購入出来るというもの。
ZOZOがARIGATOサービスを終了する以上一見魅力的なサービスにも映るのですが…。
実はナノ・ユニバースの冬の代名詞的なアイテム「西川ダウン」をはじめ、多くのアイテムが楽天で10%を大幅に超えるポイント還元を行っているのです。
これは未だに継続されていますから、ナノ・ユニバース公式サイトで買う意味は薄い…。
楽天でこのような実質的な大幅値引きが行わていることを知った人はガッカリしていましたし、こうしたサイト間で大幅な格差が生じていることは知っておくべきでしょう。
大手セレクトショップのオンラインは今後実店舗とオンラインにまたがったサービスを充実させていきそうな予感。
今後は、駅に着いたり、街を歩いていると「最寄りの実店舗にこんな商品がありますよ?」と通知が入るような、そんなサービスの構築を目指しているそう。
人気ブランドを買うなら地方セレクトショップの大型EC!?
実は下手な有名セレクトショップのECサイトよりも使われているんじゃないか?と思われるのが、地方セレクトショップの大型ECサイト。
例えば、栃木県を中心にセレクトショップを複数展開するリストリクトグループの運営する「ARKnets (アークネッツ)」は、今をときめく人気ブランドの品揃えでは大手セレクトショップを凌駕します。
カナダグースやノースフェイス、パタゴニアなど海外ブランドに加え、コモリやオーラリーなどのドメスティックブランドの取扱も豊富。
これらの人気ブランドを検索すると、かなり上位に出てくるので、一度は見たことがある人も多いのでは無いでしょうか?
取扱いブランドの総数は700を超えるそう。
ただし返品は、「web会員に入っていること」と「3日以内に電話での連絡が必要」と、ちょっとだけハードルが高いですね。
小さなお店のオンラインショップを探す方法
そもそも今ネット上には上記のような巨大なECサイトだけではなく、小さなお店もオンラインショップを持って多数のお店が乱立しているような状態にあります。
最近は洋服の買い方も変化してきて、何もお店で買うだけが唯一の方法ではありません。
メルカリを始めとするフリマアプリも全盛ですよね。
ただ人気ブランドの人気アイテムは、フリマアプリではプレミアが付いてしまったり…。
その前にまだ売っているところは無いか…?とオンラインショップを検索してみても、検索上位で出てくるところは軒並み完売だったり。
フリマアプリでプレミアが付いているアイテムも、検索ワードを変えるなど探し方次第では見つかることもあるのです。
ただ、そうやって何時間もネットで検索し続けるのは心が折れるものです。
私はよく使うブランドごとにオンラインショップをブックマークページに集めて、ドバーッと一気に在庫の有無を確認出来るようにしています。
最近ではもっぱら、自分が買うためではなくて、このブログやnoteで皆さんに紹介する時にオンラインで残っているお店無いかな~?と探すために使っているんですが。
これをですね、さらにちょっと手を加えて、ブランドごとにブログページにまとめて少しづつ公開しようかなと思っています。
まあブログのページにまとめるだけなので、大したものではないんですが、そういうサービスってありそうで無いんですよね。
オンラインショップがあることに加え、このブログはメンズ向けなので、メンズの取扱いがあり、かつ今はほとんど取引が行われていないショップは除外してより効率的にチェックして廻れるようにしてあります。
またブランドごとの販売ページにダイレクトに飛べるようにしてあります(ブランドごとのページがない場合は、そのショップのオンラインショップページに飛びます)。
人気ブランドの場合春夏はもうかなり品薄になってきているので、今すぐの有用性は低くなっているかもしれませんが、ブックマークなどして使って頂ければなと思います。
今週から徐々に公開していこうと思っています。