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突然の休刊…ここ2年でメンズジョーカーが苦戦してしまった理由とは?トレンドの変化と限られたファッション人口

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メンズファッション誌の中でも売れている方だったはずのメンズジョーカー突然の休刊!ある意味で「間違いのない」スタイルを貫いてきた雑誌も苦戦してしまったトレンドの変化…

 

 

 

 

突然の休刊、売れていたはずのメンズジョーカーに何が?

 

 

 メンズファッション誌の1つ、メンズジョーカーが今月3月号をもって雑誌版の休刊を発表しました(ウェブ版である「メンズジョーカープレミアム」は継続のよう)。

 

 

 

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 Men's JOKER (メンズ ジョーカー) 2019年 03月号 

 

  

 

 

突然のことだったのに加えて、メンズジョーカーと言うと少なくとも数年前までは「メンズファッション誌の中でも売れている方」というイメージがあっただけに、驚いた方も多かったのはないでしょうか。

 

 

3月号巻末の休刊のお知らせでは、「商業誌としての限界を迎えたこと」、つまり売上の不振を思わせる理由とともに、ファッション雑誌を取り巻く環境の変化にも触れられています。

 

その内容は、要するにSNSの発展によって無料でファッション情報にアクセス出来る以上、有料でファッション雑誌を買うのはもはや「情弱」という風潮すらある、ということなのですが…。

 

 

私はそれだけではないのではないか?と思っています。

 

 

 

 

 

 

 

トレンドの変化でスタンダードなスタイリッシュ路線に陰り?

 

 

 もちろんスマホで様々な情報に簡単に、しかも無料でアクセス出来るようになった今、情報を一番のウリとしてきた雑誌自体が売れなくなっている、というのは背景として確かにあります。

 

ただ率直に言うと、メンズジョーカーはある時期から読者が求めるものと「ズレ」が生じてきてしまっていたのではないか?と思うのです。

 

メンズジョーカーは「大人のスタイリッシュなファッション」を志向した雑誌です。

 

ややタイトからジャストフィットなサイズ感で、デニムを中心として、レザー・ミリタリーなどを取り入れた男らしいスタイリング。

可愛い、でも、トレンド感に溢れた、ということでもなく、とにかく男としてカッコいいと言わせるようなスタイル。

 

それがメンズジョーカーがブレずに提案してきたスタイルです。

 

最新号も「デニム・レザー・ミリタリー」というメンズジョーカーの色を変わらず打ち出しています。

 

これはもう普遍的で、ある意味で「間違いのない」スタイルです。

 

 

ただ…それが、消費者が求めるものとはちょっとズレてきてしまった。

 

少なくとも、毎号頻繁に買い求めるものではなくなってきてしまった。

 

それが明確にいつからなのか?は分からないのですが、ここ2年くらいでしょう。

 

 

一方メンズファッション誌としてまだまだ好調そう(に見える)メンズノンノ。

 

 

 

Men's NONNO(メンズノンノ) 2019年 03 月号 

 

 

 

とにかく貪欲に「トレンドを作り出そう」というスタイルで、どんどん目新しい提案がなされます。

 

それが果たして読者をお洒落にするのか?カッコよくしてくれるのか?はともかくとして、読者は少なくとも飽きません。

 

 

メンズノンノは、ファッションにそこまで興味がない一般的な視点から見ると「変」に映るファッションも多いものです。

 

「ファッション雑誌なんか見てもお洒落にはなれない」というような意見は主にメンズノンノが作っていると思うほど。

 

多少世間とのズレがあっても、それはファッション誌を毎号買い求めるような層からするとワクワクするものなんですね。

 

 

またメンズノンノはとにかく情報量が豊富。

膨大なアイテム数などもそうですが、エンタメ情報や芸能情報も、メンズノンノ的なフィルターを通した上で大量の情報を上手くまとめているので、毎月読者はそれらも楽しみにしているのです。

 

メンズジョーカーとは微妙に読者の年齢層が競合しなそうなサファリにしてもそうです。

 

 

 Safari(サファリ) 2019年 03 月号 

 

 

ファッション自体は、そのまま真似してもどうなの?というものですが、周辺情報も含めてとにかく毎月読みたくなるような情報量が確保されています。

 

 

一方でメンズジョーカーの提案するファッションは、世間一般から見ても明らかに変というものは少ない。


むしろ男から見て「カッコいい」と素直に思えるファッション提案がメインです。

 

ですが、そうした「スタイリッシュ」なファッションがここ2年ほどですっかりと「トレンド」ではなくなってしまいました。

 

ビッグシルエットの流れを受けてトレンドはタイトなサイジングから、どんどんゆるいサイジングへと移行しました。

 

メンズファッションにおけるちょっと尖ったようなシャープな部分がどんどん削がれ、丸みを帯びた優しいニュアンスが求められるようになりました。

 

 

こう言うと、いやいやスタイリッシュなファッションっていうのはまだまだ需要がある、となる方もいるでしょう。

そのとおり、スタイリッシュなファッションは、まだまだ需要がありますし、皆が皆トレンドを追い求めているわけではありません。

 

「リアルクローズ」はいつの時代も必要とされます。

 

それにかつて細身トレンドが席巻し、「民族大移動」のようなトレンドの変動が起きたときのようなことは今は起こっていません。

 

おそらく人々が最もファッションに気を使って出掛けるであろうクリスマスの日なんかも、街では皆結構細身の服を着ています。

(つまり、「モテ」にトレンドは全く必要ないということですね…)

 

 

ただ、やはりファッション人口には限りがあります。

 

それはもう趣味だろう?というような値段の服を買ってくれる層や、ファッション雑誌を頻繁に買ってくれる層となるとごくごく僅かです。

 

高い服買ってる?とは話題にしづらいでしょうが、周りで最近ファッション誌を買ってる?と話題にしてみてください。

 

ほとんど買っている人はいないのではないでしょうか?

 

 

貴重とも言える、「ファッション誌を毎月買うような層の人たち」がトレンドを求めて移動してしまうと、それらの人達が元居た場所は耐えきれなくなります。

 

 

昨年はドメスティックブランドとしては息が長い存在だったラウンジリザードがブランドを休止しました。

 

ラウンジリザードと言えば、シャツも吸い付くようなタイトフィット、細すぎるくらいのスキニーパンツなどが代名詞の、スタイリッシュな方向性に振り切ったようなブランド。

メンズジョーカーにもよく掲載されていました。

 

伊勢丹メンズ館にも取扱があり、売上も上々だったはず。

 

しかし2年ほど前から、こちらもやはりセール行きとなるアイテム数が増加。

 

セール行きとなってしまうアイテムが増え、そうなるとプロパー(定価)で購入する人も少なくなります。

 

メルカリ全盛の今、二次流通市場での価値も無視出来ません。

 

今絶好調なブランドと言えば、AURALEE(オーラリー)やCOMOLI(コモリ)ですが、二次流通市場での価値もかなり高く、プレミアが付くのは稀とはいえ、中古でもそれなりの価格が返ってきます。

 

洋服は一度着ただけでその価値が大きく下落するものですから、中古でもかなりの割合が返ってくるというのは嬉しいもの。

特に高額商品ではこれが購入の大きな決め手となる人も多いでしょう。

 

高い服を購入する人のすべてがそうではありませんが、ファッションに対する興味関心が高い故に、どんどん次の洋服が欲しくなる。

そうなると二次流通市場で手持ちの服を換金し、次の軍資金にする、というスタイルになります。

 

二次流通市場での評価が高いと、新品の購入もどんどん促進されて好循環になるわけですね。

 

逆にセールでも売れ残るようになると、二次流通市場での価値もどんどん下落し、したがって新品でも購入されにくくなり、また大量にセール行きに…と、どんどん悪循環になります。

  

 

「トレンドは要らない」「トレンド不要論」などもありますが、少なくとも「一般的に見たら高すぎる洋服を買う」とか「ファッション雑誌を毎月買う」ような限られた消費者の中ではトレンドは必要不可欠です。

 

トレンドは確かに万人に必要ではないのですが、トレンドでは無くなってしまったものは毎シーズンごと新たに欲しくはならないし、毎月雑誌を買ったりしなくても良いと、そうなってしまうんですね。

 

 

 

 

 

それぞれ異なる信念の形

 

 

 そのトレンドにどれだけ迎合するか?

 

 

ラウンジリザードも、晩年はビッグシルエットに近いと言えるようなコートを出したりはしましたが、やはりスタイルを大幅に変えることはありませんでした。

 

思えばメンズジョーカーも、その間違いのないスタイルを崩さないがゆえに、正直に言って毎月あまり変わり映えしないものになっていたことは否めません。

同じくらいの読者年齢層(20代後半から30代前半くらい?)を意識して、よりトレンドも取り入れている近年創刊のメンズファッジ。


こちらに数少ないファッション雑誌購入層を持っていかれた面もあるかもしれません。

 

 

 

men's FUDGE - メンズ ファッジ - 2019年 3月号 Vol.110

 

メンズファッジは、誌面の作り方も非常に美しく、見て楽しむという面でもエンタメ性があります。

 

また色使いも上手いのが特徴です。

 

変な話、リアルクローズを保ちながらも女子にも支持されやすいようなファッションを見せてくれます。

 

 

メンズジョーカーは少し、不器用だったのかもしれません。

  

 

メンズジョーカーもラウンジリザードも、自分の信念を貫いた、という意味では「良心的」です。

 

一方で読者が求めるものへ求めるものへと、どんどんシフトしていくのもまた信念なのかなと思います。 

 

メンズノンノだって、これが「読者をカッコよくするはずだ!」と思って提案しているとはとても思えないことも多いですが、それでもこれが読者を楽しませるものにはなるはずだ、と思って提案しているのでしょうし。 

 

 

売上で苦戦するファッション誌は多いですが、1つ言いたいのは、付録に頼りすぎるのは良くないということです。 

 

情報、誌面の情報量不足の代替として付録で釣るのは限度があります。

 

付録についてくるようなバッグなどをそこまで欲しいと思う読者は20代後半以降を対象にする限りそこまでいないでしょう。

 

付録が付いてしまうとどうしても誌面の情報量がさらに減りますし。

 

 

 そこは情報量で補ってほしかったですね。

 

 

ファッションには憧れを作る雑誌が絶対に必要

 

 

 メンズジョーカー3月号巻末の休刊のお知らせでは、誌面を作るのに多数の人の手や時間、手間が掛かっていること、このSNS全盛の時代でも雑誌には存在意義があるということが語られていました。

 

それは本当にそのとおりで、雑誌にしか見せられないファッション、「憧れ」というものは確実にあると思います。

 

ファッションの大部分は「憧れ」というもので出来ていますし、それがなくなったファッションというのは寂しいものです。

 

私は雑誌がとても好きな人間で、特に毎月多くのファッション誌の発売日である10日と24日はワクワクしているような人間です。

 

おそらくこれから雑誌の数自体は減り続けるでしょうが、憧れを作る存在として各年代やジャンルで1冊ずつは残って欲しいもの…。

 

ある意味で「間違いのない」スタイル、リアルクローズを貫いてきたメンズジョーカーを失うことで、メンズファッションの真ん中、バランサー的な何かを失いそうですね…。

 

 

 Men'sJOKER(メンズジョーカー) 2019年 03 月号