無印良品のMujilabo(ムジラボ)、実験的かつ実質的な上位ラインに起こった変化とは?従来の「着丈短過ぎる」問題、さらなるビッグシルエット化で解消!?
話題性こそユニクロデザイナーズコラボに及ばないものの、手が届く、なおかつ納得感のある価格設定で「良い服」を手に入れることのMujilabo(ムジラボ)。
月ごとにアイテムテーマを絞って発売していくスタイルもすっかり定着しましたが、22年はさらなる変化が起こっています。
そもそもMujilabo(ムジラボ)って何?
Mujilabo(ムジラボ)は、12年にスタートした無印良品の特別なラインです。
17年にリニューアルされ、オンラインと一部店舗のみの取り扱いですが、継続的に展開される、実験的かつ実質的な上位ラインと位置づけられるものになりました。
価格帯も明確に無印良品通常ラインよりも高めに設定されています。
昨今の無印良品の価格改定の流れを受けてムジラボもだいぶ高価格商品が少なくなりましたが、それでも
半袖Tシャツ 無印良品 990円〜1990円 ムジラボ 2990円
長袖シャツ 無印良品 1990円〜2990円 ムジラボ 5990円
と、約1.5倍〜の価格差が付けられています。
そのぶん、使われている素材などもバージョンアップされたものが使用されています。
そして、単なる上位ラインではなく実験的ラインである、というところがミソで、従来の無印良品のアイテムをアップデートしました、というだけのものではないのです。
19年には、サイズ展開をトップスはXXS-XS、S-M、L-XLの3サイズに絞り、男女兼用(ユニセックス)に。
これは今でこそ無印良品に「男女兼用」ラインが設けられて無印良品で一般化しましたが、実はムジラボ発の実験的取り組みだったのです。
さらに今までの「ナチュラル」、良い意味で「普通」「スタンダード」を志向してきた無印良品には無かったような発想・デザインのアイテムばかり作られています。
そして、その一部は無印良品通常ラインへとフィードバック。
むしろ無印良品通常ラインに「ムジラボ的な」アイテムが増えているほどです。
ムジラボ的とは何か?と言うと、一つはビッグシルエットであるということ。
昨今のファッショントレンドでは避けて通れないキーワードですが、ムジラボはこのビッグシルエットをどんどん取り入れていきました。
ドロップショルダーやボリューム感のあるソデを持つアイテムなど、無印良品通常ラインやユニクロではとても作れない、大胆なシルエットを実現。
ビッグシルエットそのものに対する拒否反応や、後述するムジラボ独自の特異性への賛否はあれど、その実験的なモノづくりは目を見張るものがあります。
またシャツのボタンがスナップボタンになっており、その数も極端に少なかったり(これでも一時期よりは増えたのです…)。
あるいはムジラボのアイテムであることの証とも言える、背中側のエリ下に付けられたハンガーループなどディテールへのこだわりは、もはや頑なにすら思えるほど。
特にハンガーループに関しては、「無かったら良いのに…」という声もよく聞くので、通常の無印良品的判断で言うと「取ってしまおう」となると思うのですが。
ニットなど取り付けるのが難しい一部のアイテムを除いて、ほぼ全てのアイテムに取り付ける徹底ぶり。
ここらへんがブランド的というか、デザイナーのこだわりを感じるところです。
ムジラボデザイナー・尾花大輔氏インタビュー
22年のムジラボ、これまでと何が変わったの!?さらなるビッグシルエット化で、ムジラボの特異性が薄まる
そんなムジラボ、22年はアイテムの作りを変えてきました。
具体的には、さらにビッグシルエット化を進めてきたのです。
(正確には昨年21年の最後半のアイテムからこの傾向はあったのですが)
元々早くからドロップショルダーなどを取り入れて、ユニクロや無印良品の通常ラインと一線を画すトレンドフルなアイテムを作ってきたムジラボ。
ただムジラボにはこれまで、独特の「型」がありました。
身幅や肩幅、そしてソデのボリューム感など、ヨコ方向には大きい。
けれど着丈、タテ方向には小さい(短い)。
この「ヨコは大きく、タテは小さい」という独特のバランスが、ムジラボ独自と言えるものでした。
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特に着丈は、ビッグシルエット以前のタイトなシルエットがトレンドの時代の「ショート丈」を思わせるレベルのもので。
相対的にも絶対的にも「短過ぎる」と感じさせてしまうアイテムが多々あり、これがムジラボを取り入れる上で大きなネックになっていました。
これは、特にシャツ類において顕著な傾向でした。
これが今年、「ヨコは大きく、タテも大きく」というバランスに変化。
要するに「普通のビッグシルエット」に近付きました。
ヤクウールセーター(21年1月発売)
ライトオンスデニムシャツジャケット(22年1月発売)
太番手天竺編み五分袖プルオーバー(22年2月発売)
太番手洗いざらしオックスシャツ(22年3月発売)
もちろん、近年のビッグシルエットトレンド自体に拒否反応がある人も一定数居るのは確か。
それでも、ムジラボ独自の特異性が薄まったことで、クオリティに対して値段的なメリット、コストパフォーマンスの良さなどに、よりフォーカス出来るようになりました。
元々そのクオリティの高さは、ユニクロや無印良品の通常ラインより明らかに上と言えるものがありましたから。
もちろん値段が上なのだから当たり前、と言えばそれまでですが。
ドメスティックブランド並とはいかないまでも、値段的にワンランク・ツーランクくらい上のセレクトショップのオリジナルに対抗出来るものも中にはあります。
ムジラボの特異性故に、惜しい!と思えるアイテムが多かったこれまでに比べ、フェアな価格設定で、ただただ良い洋服が欲しい!という需要に適うようになってきました。
もちろんどこかのブランドのコピーではなく、独自性も洋服として大事な要素だとは思いますが、普通の洋服と横並びで比較出来るようになったのは喜ばしいことです。
それでも競争に勝てる力があるわけですから。
流石に「デカ過ぎる」アイテムも…
一方で、さらなるビッグシルエット化が進んだことで、流石に大き過ぎると感じるアイテムも出てきました。
例えば半袖シャツ・ポロシャツ類。
洗いざらし鹿の子ドロップショルダーポロシャツ(22年4月発売)
半袖シャツ類に関しては、メンズサイズの小さい方、S-Mサイズでも流石に大き過ぎると感じますね。
これまでのムジラボのビッグシルエットなんて、可愛いものだったな…というくらいに、かなり大型化が進んでいるアイテムもあります。
せっかく着丈が短過ぎる問題が解消されたのに、相変わらず半袖シャツ類はちょっと取り入れるハードルが高いかもしれません。
一方であまり変わっていないアイテムもあります。
例えば、おそらくムジラボで最も売れるアイテムである半袖Tシャツ。
超長綿天竺編みTシャツ(22年4月発売)
このアイテムに関しては、若干の違いはあるものの21年のサイジングがほぼそのまま踏襲されており、他のアイテムのような大胆なシルエット変更はありません。
肩幅・身幅、ソデのボリューム感に対して、やや着丈が短いバランスのままなので、注意が必要かなと。
これから夏に掛けて売れまくるアイテムですから、あまり大きく弄りたくなかったのでしょう。
鮮明になる無印良品通常ラインとの差別化、「誰もが着れる服」からは遠ざかるも…
22年のプチリニューアル、さらなるビッグシルエット化で、ムジラボの当初のコンセプトである「年齢も、性差も超えて、誰もが着れる服」からはさらに遠ざかってしまったと言わざるを得ないでしょう。
明らかに今のこの路線は、無印良品通常ラインと差別化が行き過ぎており、従来の無印の顧客層をぶっちぎってしまっている…。
トレンドへの理解と言うか、リテラシーと言うか、そういうものがないと「何だこれは?」となりかねない、そういった極端なラインに今のムジラボはなっています。
今までの無印良品と、極端なムジラボ、そしてその中間的存在として「男女兼用」ラインが出来たので、トータルでのバランスは良くなったのかもしれませんが。
それでも、ムジラボ独自の特異性は薄まったことで、「良い服」にアプローチしやすくなったと思っています。
ユニクロや無印良品通常ラインでは物足りない、かと言ってシャツが何万円もするようなブランドは手が出ない…。
中間価格帯であるセレクトショップのオリジナルアイテムにしても、値段とクオリティの釣り合いはどうなの?といった、現状の日本のアパレル業界におけるスキマを埋める存在、選択肢を増やしてくれる存在です。
ムジラボ取り扱い店舗