21AWがラストシーズンになったユニクロ+J(プラスジェイ)の真実!過酷な並び…コートを買ったら彼女にフラれた!?プラスジェイとは、何だったのか?ユニクロの限界と希望を見せてくれたコレクションのこれまでを振り返る!
昨年21年秋冬コレクションをもってラストとなったユニクロ+J(プラスジェイ)。
話題性は、現在多数のコラボを抱えるユニクロでも随一でした。
それだけにこれで終了は、やはり惜しい。
ただ思えば、2009年に衝撃的とも言える登場を果たした初代プラスジェイは、結局は尻すぼみになっていつの間にか終了した感がありました。
当初からの契約の問題もあるとは思うのですが、話題性があるうちに華々しく終える、というのもアリですよね。
ただユニクロUが若干ピークアウトした感もある中で、ユニクロが次の一手をどうするか?というのは今から興味深いところです。
その前に、20AW、21SS、21AWと3シーズンを駆け抜けたプラスジェイの本当のところを振り返りましょう。
+J復活の20AW、象徴的なアイテムになったカシミヤブレンドオーバーサイズチェスターコート、デートに着ていくと彼女にフラれる!?
プラスジェイが久々に復活となった20AWシーズン。
話題性も物凄くて、発売当日は取り扱い店には長蛇の列が…。
入場規制を行う店舗、行わない店舗と対応が分かれましたが、私が行った店舗は運悪く後者。あっさりと入場は出来たものの、入場規制が無いため売り場は大混雑。
古いアニメで、セール品を奪い合う、みたいなシーンを見たことがあると思うのですが、まさにそんな光景が繰り広げられていました。
アイテムが運ばれてくると、バーっと人が群がり、奪い合い、みたいな…。
当時はコロナ禍も再燃してきていましたし、もう色々な意味で「 物売るってレベルじゃねぇぞ!」という感じでしたね。
名古屋店のカオスっぷりはTwitterでも話題になりましたね。
安全面への配慮が徹底されていたとはとても言えず、残念でした。
そんなプラスジェイ20AWシーズンのアイテムで最も高額なアイテムだったのが、「カシミヤブレンドオーバーサイズチェスターコート」です。
これ定価約27400円。
(ちなみに上記URLからオンラインストアに飛ぶとセール価格になっていますが、おそらくそのセール価格では買えなかったはずです。)
現在「安く良いモノを手に入れたい!」と思ったときに、最も難儀するアイテムはコート、特にウールコートです。
素材であるウールの高騰に加えて、近年のトレンドであるゆったりとしたシルエットのコートを作るためにはどうしても生地をたくさん使います。
2-3万円台と言うのは、セレクトショップのオリジナルアイテムにおけるウールコートの標準的な価格帯。一般的には「ちょっと高いなぁ…」と思われる値段だと思うのですが、それでもなかなか良いウールコートを見つけるのは難しくなっているのです。
この価格帯だと、どうしても生地に化繊を使わざるを得ないことが多く、さらにその割合も多くなるため満足感は低下しがち。
そんな中で、ほぼ天然素材で、生地感が良く高級感があり、なおかつオーバーサイズのコートを出してきたことへの驚き。
カシミヤは大体15%ほど入っていれば十分その質感を感じることが出来ます。
アイテム名に「オーバーサイズ」とあるだけあって、シルエットも非常に今どきのゆったりとしたもの。
「+J」では他に、ちょっと古いと言うか、数年前に流行ったような「堅い」シルエットのチェスターコートもあって、そちらはイマイチに感じたのですが。
普段のユニクロだと、シルエットがトレンドと乖離していることもあって、サイズを上げて着る、という方も多いと思います。
今のトレンド的に、私はユニクロでSサイズを選ぶことはほぼ無くなっていますが、これはSサイズでもしっかりゆったり感が出ます。
このアイテムに関してはサイズを上げなくともしっかりとオーバーサイズになる、それでいてかなり綺麗にまとまる…という。
ユニクロユーザーである老若男女、万人に対応するため、シルエットに対するこだわりはイマイチのユニクロですから。
それが何だ、このシルエットの良さは…。
この素材感×シルエットによる見た目の良さは、ユニクロとはとても思えず。
より分かりやすく、上位ブランド的なものを感じましたね。
ですが…おそらく思い切りコストダウンせざるを得なかったであろう、表からは見えない裏地に関してはちょっと残念な点も…。
「背抜き」と言って、裏地が全面にではなく、上部分しか無い仕様で、まあそれは良いとしても、このポリエステル製の裏地がシャカシャカ音がするんですよね。
安っぽいというだけなら、この値段ですし、まだ許せるところだと思うのですが、この音がかなり気になるということで、オンラインストアのレビューは散々なことになっています。
「これを着てデートしたら『シャカシャカうるさい』と彼女の機嫌を損ねてしまい、その後フラれました。」というレビューもあったほど。
私はまさか、そこまでではないだろう…とも思うのですが、うーんでもこれは気になる人はかなり気になるだろうなと。
それだけで一蹴するには、惜しい服なのですが、服は見てくれの良さだけでは無いですからね…。
着てみて、使ってみてどうか?と言うのは、道具である以上は大切なポイント。
コスパの良さだけに囚われると近視眼的になり、そういった服の本質を見失ってしまうかもな…と、考えさせられます。
ユニクロをネタとする以上、必要以上にコストパフォーマンスの良さ、つまりこの値段でこんな服作るなんて凄い!という点だけに目を奪われてはいけないな、と改めて自戒するきっかけになりました。
私もちょっとこの裏地は、あと2000円、3000円高くなっても良い物にするべきだったんじゃないのかなと思うのですが…。
それでも、おそらく売れたと思うので。
何よりこのカシミヤブレンドコート、入手難易度が高過ぎましたね。
発売日当日に朝から並んでも手に入らない…とか、そういうレベルだったのです。
オンラインストアもずっとダウンしてしまっていましたし。
私は運良く、発売日にようやくオンラインストアが繋がったタイミング(あれは確かお昼過ぎくらいかな?)で購入出来たのですが、大きいサイズは厳しかったんじゃないかな?
それ以降もちょいちょい在庫復活はあったのですが、Lサイズ以上が復活したのを見たこと無かったですね。
このコート、どこで一番売っているのか?と言うとメルカリなんじゃないか?というレベルで…。
ここまで手に入りづらいと、コスパも何もあったものではないです。
一気に買いやすくなった?盛り上がりに欠けた?21SSシーズン、意外に良かったのは…
20AWから約4ヶ月後の21年3月、誰もがあるだろう…と思っていた21SSシーズンのプラスジェイ、やっぱりありました。
その煽りを食らってか、先に発売されたユニクロU21SSはあまり盛り上がらず、かなり早期に多数のアイテムがセールになってしまうという有様。
それだけプラスジェイに皆期待してました。
ただ20AWで良かったオーバーサイズのコート類が、あんまり良くなくて…。
素材が春夏シーズンらしく化繊素材になったのですが、それがちょっと安っぽかったのです。
塩縮ナイロンと言って、凹凸感のある、ナイロンの中でも比較的高級感のあるものを使っていたのですが、それでも安っぽさは否めず。
さらに裏地は音はしないものの、これまたかなり安っぽくて、なおかつ細かいパーツ類までもちょっと安っぽくて…。
デザインはすごく凝っているのに、素材やディテールが付いてこなかった、という出来でした。
秋冬シーズンと違って、春夏は値段もある程度抑えめにしなければ…という制約が、大きかったのかもしれませんね。
そんな中、一際出来の良かったアウターが「オーバーサイズブルゾン」。
いわゆるMA-1型のブルゾン。
今更MA-1?と思われるかもしれませんが、今MA-1は再度トレンドアイテムとなっているのです。
コレ、羽織ってみるとカッコいい。
モチッとした生地感は約1万円とは思えない高級感がありましたし、何よりシルエットのバランスが良い。
MA-1って忠実に作ると、中綿などでかなり膨らみが出て着こなすのが難しいのですが、これは春夏物ということもあり、ボリュームは出過ぎない。
かと言って一昔前のタイトなMA-1のようにペタンと貧相になることもなく、絶妙なバランスだったのです。
これは+J21SSシーズンの良作アイテムと言って良いでしょう。
欠点というわけではないですが、最近トレンドの太いパンツ類との相性がイマイチ。
まあこれはMA-1全体に言えることでもありますが。
プラスジェイはコレクション内で細い、スリムフィットのジーンズを出しているように、細いパンツと相性が良いですね。
ちなみに私はプラスジェイのスリムジーンズは流石にパスしました。
(上の写真は無印良品のアイテムです。)
最近細いパンツ全然穿かないからなあ…。
21SSシーズンは、20AWと違ってかなり落ち着き、体感的には盛り上がり具合は半減したように思えましたね。
20AWのカシミヤコートや、ドライバーズニットなどのように、店頭で見ることが出来ないアイテムも無かったです。
20AWの転売が、言われていたより旨味が無かったから?
メルカリが発売直前ユニクロと協定を締結し、プラスジェイの出品を牽制したから?
など転売絡みで色々憶測も流れましたが、元々ファッションの世界では春夏シーズンは秋冬に比べて盛り上がらないものです。
プラスジェイ以来の大きな話題性を持っていたコラボレーション、ユニクロ・ルメールですらそうでした。
単に欲しいと思えるアイテムが少なかった…というのが真相ではないでしょうか?
パッと見の質感・高級感は文句なし!ただ、プラスジェイのシャツは綺麗過ぎる?
おそらく「+J」全シーズンを通して、比較的手に入りやすく、かつクオリティの高さが分かりやすかったアイテムが、スーピマコットンを使ったシャツではないでしょうか?
プラスジェイ、正直Tシャツ類は微妙なのですが、そのぶんシャツが強いコレクションでした。
「スーピマコットンレギュラーフィット シャツ」は、約4400円でした(当時は消費税別表示)。
ユニクロのデザイナーズコラボラインである「ユニクロU」だと当時シャツは定価3300円くらいだったので、約1000円上乗せした形。
ユニクロで4400円のシャツは、十分高いのです。
ただ、ユニクロは1000円でも、こんなに違うのか…というくらいにクオリティがアップします。
ぬめり感のある、高級感を感じやすい生地。
10年前の「+J」でもシャツが一番話題となりましたが、今回はその頃とは生地のクオリティが段違い。
昔某セレクトショップで買ったシャツと似ていて、なぜか悔しくなりましたね。
このシャツ生地は、分かりやすく高級感ありましたね。
ただこの「レギュラーフィット」、今現在使いやすいか?と言うと、少々難しい…。
レギュラーフィットに関しては、ドレスシャツ的な趣が強いんですね。
実は「ユニクロU」のシャツと比べて、そんなに大袈裟に違うわけではないのですが、それでもタテに長く、横に小さい、というサイズ感ではあるので。
近年はドレスシャツをそのままではなく再構築し、ゆったりとしたサイズ感でカジュアルシーンにも馴染むようなテイストにしたものがトレンド。
一方で、このシャツに関してはそういった要素は薄いのです。
このシャツはカジュアルシーンだと、ちょっと合わせるアイテムが難しいんですね。
あまりにカジュアルテイストなパンツやスニーカーを合わせてしまうと、それらのアイテムと反発してしまい、シャツだけが浮いてしまう…。
色落ちの効いたデニムパンツにピッチリとした白シャツを合わせる、みたいな着こなしって昔流行りましたが、今やると「IT社長」とかあだ名付けられると思うので。
このシャツに合わせて、パンツも綺麗な印象のあるスラックス、それでいてカチッとした仕事着の印象が出過ぎないようにワイドなものを選んだり…。
靴も程よくカジュアルダウンさせた革靴を選んだり…。
と、このシャツのテイストと喧嘩せず、なおかつキッチリし過ぎた見え方にしないように…とやたら気を使いますね。
これはあくまで一例であって、コーディネートは着る人の自由なのですが、着崩しづらいシャツだったかなと思います。
もう少しシャツ単体でカジュアル要素があると良かったのですが、20AW時点では変にデザインを効かせていたり。
「買ったは良いし気に入ってはいるけど、どう着たら良いか分からない…」となりがちなアイテムだったかもしれないですね。
プラスジェイってそういうアイテム多かったかもしれない。
ただ21SSシーズンではシャツのバリエーションに変化が。
スタンドカラーかつ、オーバーサイズ、というトレンドに則した現実的なバリエーションが登場しました。
ラストシーズンとなった21AW、核となるアイテム無く、盛り上がりは微妙なものに…
そして最後のシーズンとなった21AW。
フルラインナップ取り扱い店舗を増やしたこともありましたが、正直話題性も1年前の20AWから大分減退していたこともあり、混雑は大幅に緩和していましたね。
私が訪れた店舗も、並びは出来ていたものの、至ってスムーズにサクッとアイテムを見ることが出来ました。
20SSでも、それなりに苦労はあったのですが、何の苦労もなかったです。
再登場から1年が経過し、あれだけ特別感のあったプラスジェイは普通のユニクロデザイナーズコラボになってしまった感じ…。
皆さん手には取ったり、試着したりはするものの、ラックからあまりアイテムが減らない…。
古いアニメのバーゲン(死語)のようだった1年前の光景はもうありませんでした。
20AWのような、これが目玉!というアイテムも無く。
シャツのように、相対的には優れているアイテムにも早くも飽きが見られていたように思います。
デザイナーズコラボは、特別感が薄れると途端に「やっぱりユニクロだしな…」という現実感が襲ってきます。
ただよくよく見れば、良いアイテムも普通にあったのです。
例えば「ダウンオーバーサイズパーカ」。
ふとした瞬間に見せる高級感は、今までのユニクロには無かったもの…。
価格の割には優等生…みたいなアイテムが多いユニクロの中にあった、より上位のブランドに負けない爆発力のあるダウンジャケットだったなと思います。
その他カーキのPコートなど、街で見かけても普通にカッコいいアイテムがあったラストコレクションでした。
ただ若干サイズ感などで着こなしの難しさのあるコレクションではあって、特にMA-1などは21SSと比べて、かなり似合う人少なかったのでは?
また、完売やサイズ欠けするアイテムが少ないと感じてはいたものの、その後セールになるアイテムが多過ぎ、またその時期も早過ぎましたね…。
ユニクロの通常ラインよりも高額なアイテムを並べるも、売れないから早期に値下げ、それでも売れないからまた値下げ…。
どんなブランドもセールは慎重ですが、どうしてもユニクロは大量に作ったものをある程度売り切るまでやらないといけないですから。
これが最後とは言え、プラスジェイのブランド価値的なものは相当下がってしまったのではないでしょうか。
高額商品が3分の1程度まで値下げされるのはちょっとやり過ぎ…。
誰もが一度は思う、「ユニクロが本気出したら凄いアイテムを作れるのでは?」を一部とは言え実現してくれたコレクションではあるものの、そうなると、セレクトショップオリジナル品などと価格的に競合してしまう。
そうなった時に、圧倒的にプラスジェイのほうが勝っている、とまで思わせるアイテムは無かったのかな…。
このままでは、プラスジェイが無くなった後、ユニクロで高額ラインは当分無理だし、出来たとしても継続的なシリーズ化は難しい…という限界も見せてしまったかなと思います。
プラスジェイが無くなることで、プラスジェイの影響をモロに受けていたユニクロU人気は多少復活するでしょうし、次はどのデザイナーやブランドとコラボするのか?という期待は高まります。
ただ、あれだけ鳴り物入りで始まったUNIQLO and JW ANDERSON(ユニクロ アンド J.W.アンダーソン)もどんどん規模を縮小。
高額アイテムは無くなり、大火傷しないように21AWシーズンは部屋着に使えそうなものを中心に…という消極的なものに。
21AWシーズン新規に始まったUNIQLO and White Mountaineering(ユニクロ&ホワイトマウンテニアリング)も、正直期待ほどでは…。
これは昨今のアウトドアブームもあって、期待が高まり過ぎたという側面もあるのですが。
私はユニクロ×ホワイトマウンテニアリングのフリースオーバーサイズジャケットを秋が深まるまで着まくっていましたが、それでもデートに行くのにオススメの服、とかではないんですよね。
ちょっとブランド側の志向が、国民服であるユニクロとコラボすることでボヤけてしまって、「ユニクロ寄り」過ぎるアイテム達になってしまったかな…と。
今一番ブランド価値を保てているコラボって、実はUNIQLO×Theory(セオリー)かもしれないですね。
残念ながら21AWシーズンはメンズラインは無かったのですが…。
デザイナーズコラボを乱発してはダメにしていくようなやり方は、止めて欲しいなあ…と思っていたのですが、そんな矢先ユニクロU2022コレクションが発表されました。
良い意味でスッキリとした、アイテムを選びやすそうなコレクションになっていますね。
「どうせプラスジェイがこの後あるし…」と、ここ数シーズンいわば前座扱いされてしまっていたユニクロUですが、復権の年になることは間違いなさそう。
ただ、ユニクロUだけではとてもファッションは完結しませんし、デザイナーズコラボがスッキリしてしまった今、ユニクロ以外の他ブランドのアイテムも見てもらえるチャンスの年とも思っています。