MARNI、ユニクロU、Theory、JWアンダーソン…初回しか盛り上がらない問題、インフルエンサーの影響力落ちてる?+J(プラスジェイ)の居なくなった2022年のユニクロデザイナーコラボを振り返る!前編
今週2月10日(金)、遂にUniqlo U (ユニクロユー) 2023年春夏コレクションが発売開始になります。
例年1月中にスタートするユニクロUですが、今年はやや遅いスタート。
ただ各ブランドも生産遅れが目立つシーズンになっており、これはもう仕方ないことでしょう。
まだまだ寒いしね…。
それでもユニクロのデザイナーコラボがスタートするということで、ファッションのシーズンが始まるワクワク感みたいなものを感じますね。
その前に!2022年のユニクロデザイナーコラボを振り返っていきましょう。
+J(プラスジェイ)が去り、主役の座に戻ったユニクロUだが…「熱狂」を生み出すことはもはや難しいことを再認識させたユニクロU22SS
昨年ユニクロデザイナーコラボにおける一番大きな影響は何と言っても、20AWから21SS、21AWと3シーズンにわたり展開されたユニクロ+J(プラスジェイ)が終了したことでしょう。
「高級版ユニクロ」と言っても良い、ユニクロにしてはやや高価なラインとなった+Jですが、特に復活後のファーストシーズンとなった20AWで残した印象は鮮烈でした。
そこから3シーズン「+Jの前座」的な、不遇とも言える役割をさせられてしまっていたのが、ユニクロU。
クリストフ・ルメールがアーティスティック・ディレクターを務めるユニクロUは、16年スタートともはやユニクロで最も歴の長いデザイナーコラボになりました。
そのため、あまりにユニクロと一体化し過ぎてしまい、新鮮さはもはやありません。
しかしその分、安定感があり、ユニクロに皆が求める「シンプルでベーシックなファッション」を体現しているラインでもあります。
特に21AWシーズンにシルエットが改良された「レギュラーフィットジーンズ」は、通年で販売しても良いような、今の時代のベーシックパンツでした。
「ユニクロと言えば黒スキニー」みたいな時代もありましたが、そういう売り方も可能だったんじゃないか?と思わせる、太過ぎず、細過ぎず、バランスの取れたパンツでした。
このレギュラーフィットジーンズは、22SSシーズンでは、21AWのシルエットをそのまま踏襲。
それまでセルビッジでは無かった黒がセルビッジ化するアップデート(「セルビッジレギュラーフィットジーンズ」)がなされました。
またブリーチデニムがトレンドになったことに合わせてブリーチバージョンも登場。
ユニクロU22SS レギュラーフィットジーンズ
ほとんどのブランドが、かなり太さのあるワイドデニムでブリーチデニムを出す中、この太過ぎず細過ぎずのバランスは貴重でした。
このユニクロU・レギュラーフィットジーンズは、23SSシーズンではコットン100%からヘンプ混となる「コットンヘンプデニム」に生まれ変わります。
これに伴い、定価は約5000円となり、果たしてその分の付加価値を見出だせるのか注目です。
その他、これまで似たようなステンカラーコートばかり…という印象のユニクロUにあって、トレンチコートは新鮮味が有りました。
ユニクロU22SS トレンチコート
どうしても「ユニクロっぽさ」を生んでしまう、固い素材感を払拭して、シワ感のあるナイロン素材を使用し、深い色味も魅力だったこのトレンチコート。
ユニクロUのコート類は、どうしてもそのうち値下げされてしまうのですが、それは承知のうえで推したくなる出来でした。
その他不作なことも多い春ニットも上出来で、定評のあるシャツ類も変わらず出来の良さをキープ。
1年を通して見ても、最も良品が充実していたのがユニクロU22SSシーズンでした。
ただそれでも、即完売に至ったアイテムは、非常に生産数の少なかった「オーバーサイズフーデッドブルゾン」のパープルくらい。
ほとんどのアイテムは、完売はせずに、しばらく経ると値下げになってしまいました。
これは復活後最後のシーズンとなった+Jの21AWシーズンが軒並み値下げとなってしまったことからも予想出来たところではありましたが…。
インフルエンサー達も、+Jが無くなったことでユニクロUにかなり力を入れて取り組みましたが。
もはやユニクロデザイナーコラボであっても次々と即完売品を生み出すような「熱狂」を生み出すことはかなり難しくなっているのです(ただし「初モノ」「初回」は除く、後述)。
+Jが無くなって、もうメインと呼べるコラボはユニクロUしか無いのに…という状況であってもそれは変わらない(この頃はまだユニクロ×MARNIの発表はされていませんでした)。
そのことを再認識させたのが、皮肉にも充実のラインナップを揃えたユニクロU22SSシーズンだったと言えるでしょう。
不遇を囲う中でもキラリと光るアイテムを送り出すUNIQLO and JW ANDERSON、「部屋着」コンセプトからの復帰
鳴り物入りでユニクロコラボデビューを果たしたものの、不遇を囲い続けるコラボ…それがUNIQLO and JW ANDERSON(ジェイダブリューアンダーソン)。
独創的なアイデアから来るデザインはユニクロの素材感や生産上の限界からくる制約から相性が悪いことが多く、全く売れないこともしばしば。
最近は少ない点数のラインナップに縮小され、デザインもワンポイントなどに抑えられています。
21AWシーズンは、+Jもあったからか、「ルームウェア」「お家時間を楽しむ」がコンセプトに。新型コロナ禍における、いわば実験的なコレクションに。
おそらく契約年数の問題でユニクロ的にも止められないのだとは思うのですが、それにしても不遇を囲っています。
そんな、いわば「部屋着」に格下げされてしまったかのような21AWを経て、22SSシーズンでは従来の仕様に復帰。
それまでかなり遅い時期に追いやられていた発売時期も、3月の春物としては良い時期にリリースされることになりました。
そして、ユニクロUのように従来したラインナップでなくとも、1シーズンに1アイテムはキラリと光るアイテムを出していた元のJWアンダーソンに戻ってくれました。
UNIQLO and JW ANDERSON 22SS オーバーサイズブルゾン
この「オーバーサイズブルゾン(カラーブロック)」は、塩縮のような細かいシワ感を付けたナイロンで、レトロな配色を実現したスポーティーなブルゾン。
+Jが21SSシーズンで「安っぽい」と半ば失敗させてしまった塩縮加工ナイロンですが、JWアンダーソンのようにレトロ・スポーティーなデザインにまとめると、その安っぽさも許される…。
もしかしたらJWアンダーソンの生きる道を示したようなアイテムでした。
UNIQLO and JW ANDERSONは、23SSシーズンでも継続が決定しており、またスポーティーなブルゾンがリリースされます。
ユニクロの特別ラインの一つの正解を示すUNIQLO × Theory
4月末、GWのスタートに合わせて投入されたのが、UNIQLO × Theory。
Theoryは、ニューヨークのファッションブランドですが、日本ではユニクロを運営するファーストリテイリング傘下。
そんなこともあって度々コラボをしているのですが、近年はどんどん洗練されている印象。
21AWでは、レディースのみの展開となったものの、その洗練されたミニマルなコレクションはメンズでもこのままやってほしい…と待望されました。
ただ、回を重ねるごとにやはり鮮度は落ちており、同時発売となったファイナルファンタジーの35周年UT(ユニクロのプリントTシャツライン)に話題性も実際の集客も奪われてしまい…。
ただアイテムは、変わらず良かったです。
UNIQLO × Theoryの近年の人気アイテムは、ショートパンツ。
UNIQLO × Theory 22SS 感動イージーショーツ
特に20SSでは、新型コロナ禍の中で限定的な発売になり、即完売。
定価をはるかに超えるプレミアまで付いてしまったのですが、回を重ねる事に落ち着いてきました。
ショートパンツは本当、面積が小さいので、値段が高いものでもそれだけの差を上手く表現するのが難しいアイテムなんですよね。
だからショートパンツはこれくらいで良いよね…というところを上手く突いたアイテムだと思います。
また22SSはVネックTシャツも良かった。
UNIQLO × Theory 22SS リラックスフィットVネックTシャツ
2010年代は、とにかく首の詰まったクルーネックからてこでも動かないトレンドでしたが、ここ最近はスキッパーをはじめとして、徐々に首元が開き始めている。
でもガッツリ深いVネックはまだ…というところで登場した、ちょうど良い開き具合のVネックT。
スーピマコットンではないものの、滑らかなで気持ちの良い素材感と、1枚で着ても下着っぽくなり過ぎない厚みを両立したこのTシャツは、「ユニクロ超え」のクオリティを誇っていました。
これはもう1000円値上げしても全然許せるクオリティ(今の時勢なら当然そうなるかも…)。
ユニクロでアウターは買わないけど、下着のTシャツは買う、という人はかなり多く居ますから、こういうアイテムは幅広い層に刺さるはず。
2009年の第一次+Jコレクションも、値段の割に白シャツがすごく良いと話題になりましたし。
また白黒グレーというモノトーンを貴重としたミニマルなコレクションは、いわばユニクロの特別ラインの一つの正解と言えるかもしれないですね。
22年コラボ最大の話題性となったUNIQLO and MARNI、初モノの強さ、花柄シャツが被りまくる!?ユニクロにおける歴代最高のスラックスも登場
2022年のユニクロコラボ、話題性で言えば一番と言えたのが、何と言ってもユニクロ×MARNI。
MARNIと言えば洋服というよりも、職人ワザを活かした財布やバッグのほうが有名だと思いますが、ユニクロで出すのはあくまでも洋服ということで。
一体どうなるんだろう?と思いましたが、蓋を開けると花柄やグラフィティなどを前面に押し出した、ユニクロらしからぬカラフルなコレクションになりました。
前述のセオリーコラボとはまさに真逆、白黒グレーなどモノトーンをほぼ使わないコレクションでしたが、売り場は非常に盛り上がりましたね。
流石に+J程ではないまでも、やはり海外人気ブランドとユニクロの初コラボは爆発力があることを再認識しました。
UNIQLO and MARNI 22SS オーバーサイズオープンカラーシャツ
この花柄半袖シャツなどは店舗限定商品では無いこともあってか、着ている人を1日に2〜3人見かけることもあり。
「ユニクロで非限定の、インパクトのあるアイテムは街中で被りまくる、それが容易に分かってしまう」ということもよく分かりました…。
まあこれは気にしない人は良いのですが。
ユニクロコラボを構成する「お祭り」的な要素が強いコレクションで、基本的には手を出さない方が良かったですね。
有名コラボは紙袋が特別だったりで、その後洋服屋さんに寄ると「お!買えました?」とか話題になったり、やっぱり話題性はすごくあるのですが。
着なければ意味が無いですし。
冷静になると、これは着れないな…みたいなこと、特に多いコレクションだったんじゃないかな?
そんな中で際立って良品だったのがこのスラックス。
UNIQLO and MARNI 22SS ワイドフィットタックパンツ
「ワイドフィットタックパンツ」…このスラックスは、ユニクロ歴代最高傑作と言っても過言で無かったですね。
腰回りは2タック入りで、とにかく太く…と、近年のトレンドを取り入れたデザイン。
なかなかユニクロにはない大胆なデザインです。
2タックで情報量のある腰回りから、緩やかなテーパード。
生地も化繊ならではのシルエット形成力の高さがあり。
かなりハイウエストな位置から生地を落とせば、太さがあるので、脚に生地がまとわり付かず、え?これユニクロというシルエットに。
このハイウエストな位置から生地を落とすように穿く…という、近年のトレンド、「作法」のようなものを知らなければ「なんだこのただ太いスラックスは…?ダメだな」となってしまいかねないところ。
まるで「それでも良い」と言わんばかりの思い切りの良さ。
カラーリングにしても、黒で出せば安全に売れただろうに。
あえて少し毒々しい感じすらするパープルで展開するあたりが、UNIQLO and MARNIが「分かってもらえなくても良い、売れなくて良い、もっと大事なことがある」と、暗にメッセージを込めているかのようでした。
ファッションにリアリティを求める私としては、まだリアリティを持って着れるオリーブも出してくれて助かりましたが…。
UNIQLO and MARNIの22SSシーズンは、売上よりももっと打ち出したいこと、新型コロナ禍からの開放されたい!という願望やメッセージ性が溢れていて。
直前のUNIQLO × Theoryのミニマリズム、リアリズム…皆がユニクロに求めていることの真逆をやったんです。
そこに皆感化されて、ちょっと無理があるかもしれないけれど…花柄シャツを着よう!という気分になった。
ユニクロコラボってどうしても、ブランドをユニクロという枠に押し込めるイメージがありますが、そこをちょっと動かした感はありましたね。
UNIQLO and MARNI、本当22SSは良かったのですが…。
後編に続く