おまかせ定期便は服選びが面倒な人の最良のソリューションになれるか?「服に詳しくて、かつ自分を分かってくれる」、そんな友人の代替になれる?この問題に回答出来たら販売員になってみるのもアリかも?
このサイトに来てくれている人の中には「服を選ぶのが好き」という人もいれば、「服を選ぶのは面倒(でも出来るだけ良い服を知りたいから来ている)」という人もいるでしょう。
今回ZOZOTOWNで始まった「おまかせ定期便」は、「服を選ぶのが面倒」な人にとっても「服を選ぶのが好き」という人にとってもちょっと気になるサービスかもしれません。
毎月この箱が届く…?
ZOZOTOWN「おまかせ定期便」とは?
ZOZOTOWNの「おまかせ定期便」は、利用者の体型や好みを元に、おまかせ定期便専門の販売員がゾゾタウンで扱うアイテムからコーディネートを組み、そのアイテムを一式実際に送ってくれる、というもの。
利用者はその中から欲しい物だけを選んで買い取り、残りは返品します。
支払う金額は、買い取ったものだけ。
洋服を選ぶのが面倒、選び方が分からないというニーズを解決するサービスです。
おまかせ定期便は服選びが面倒な人の最良のソリューションになれるか?
それが果たしてオシャレと言えるか?は別として、洋服の選び方がわからないという人が「ちょっとカッコよくなる」とか「ちょっと可愛くなる」ための最良の方法はおそらく、
「洋服に詳しくて、かつあなたのことをよく知っている友人に買い物に付き合ってもらう」ことです。
洋服選びが上手い人の要件は2つあります。
①洋服を知っている
②自分を知っている
そもそも世の中にどんな洋服があって、どこに行けば買えるのか?を知らなければ、洋服を選ぶこと、買うことが出来ません。
そして洋服、ファッションは究極的には「どんな自分になりたいのか?」ということです。
自分がどんなものが好きなのか?何が似合うのか?最終的にはどうなりたいのか?を知らなければ、洋服を着て、鏡の前で満足することは出来ないでしょう。
そして…この2つ、実は他人に丸投げすることも出来るんですよね。
その他人に、「自分を分かってもらう作業」がちょっと大変だぞ、というだけなのです。
だから一番良いのは、先程言ったように「洋服に詳しくて、かつあなたのことをよく知っている友人に買い物に付き合ってもらう」ことなのです。
しかもこの場合、ファッションにおいて一番難しい「客観的に自分を見る」ということが出来てしまいます。
それに意外と「自分では選べない服」ってあると思います。
メンズで言うとちょっとカッコつけた服、レディースで言うと可愛い服を選べない人って結構いると思うんですが、それも「他人に選んでもらった」という心のアリバイを持つことで一歩踏み出せると思うんですよね。
ある日突然髪を染めてきた友人に「どうしたの!?」と聞くと、「美容師に勝手にやられた…」とか言い出すことがありますが、あれと同じですね。
冷静に考えるとそんな美容師いないわけで、多分茶髪にすることを「提案された」だけで染めると決めたのは本人だと思うのですが、何にせよ彼はそれで一歩踏み出せたわけです。
ファッションに関して少しでもプライドのある人は難しいのですが、そんなの無いよ?という人はこの方法を取るのが一番です。
ただ、そんな友人周りにいなかったらそもそも使えない、というのがこの方法の最大の欠点。
さらに、該当しそうな友人がいても、成り行きによっては友人関係にヒビが入るリスクが有ります。
例えば全然好みじゃない服を提案された時に、「変な服を勧められた」となったり。
またせっかく選んでくれたのに「あいつ全然人の言うことを聞かない、それなら自分で選べよ!」なんてことになってしまったり。
これまでも友人の代わりにやってくれるコンサルティングサービスのようなものはあったわけですが、あまり普及していないですよね。
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ゾゾタウンだからこそ出来るサービス
既存のファッションコンサルティングサービスは、「私○○があなたに代わって洋服をお選びします!」というタイプ(スタイリスト主体型)と、店舗のスタッフが洋服選びに付き合ってくれるタイプ(店舗スタッフ主体型)に分けられます。
前者は店舗に縛られずアイテムを選ぶことが出来ますが、当然ボランティアではないので手数料が発生します。
数千円から、高い人だと1時間1万円ほど取るようです。
(さらに高級なサービスもあります。)
前者のように「他人に数千円の報酬を払って洋服を選んでもらう」という人はなかなかいないでしょうし、何よりその付加価値に見合うだけのサービスを提供出来るスタイリストがそんなに多くないという問題があります。
お金を払ってこれかぁ…という。
後者は無料のことが多いのですが、「店員さんの接客」の延長ですから、セレクトショップなりデパートなりその規模は違うとはいえ、「縛り」が発生し、選べるアイテム、提案の幅にどうしても限界があります。
何より、このモデルが失敗しているから現在アパレルが不振になっていると言えます。
ZOZOTOWNの定期便は、後者の発展型と言えるでしょう。
ゾゾタウンの販促という形を取ることで、利用者は無料でこのサービスを受けることが出来る。
販売員はZOZOTOWNの持つ莫大なアイテムの中から、顧客に合ったアイテムを選んでコーディネートを組むことが出来ます。
この莫大なアイテムの中から選ぶことが出来るというのが最大の強みです。
ゾゾタウンという壮大なプラットフォームを使うからこそ出来るサービスではないでしょうか。
あなたのために選んだ+送りつける、がポイント
このサービスのもう1つのポイントは、実際に選ばれた品物が送られてくるということでしょう。
どんなに良い提案でも、服は、実物を見て、実際に触って、着てみないと最終的には分かりません。
ユニクロがあんなに強いのは日本全国に店舗を構えて、実際手にとって見れる機会を作っているからでもあります。
これ「コーディネートの提案をネット上で行うだけ」だったら、絶対成功しないと思います。
そこから買う、というさらに能動的なアクションが必要ですから。
提案に実物がちゃんと付いてくる。
あくまで送りつけられるのを待っているだけで良い、受動的な態度で良い、というのがポイントです。
実際に返品覚悟で商品(しかも普通に売られているちゃんとした物を!)を一式全て送りつける体力がある企業はそうはないはず。
しかもそれは「あなたのために選んだ」という物です。
これはもちろん販売員と受け手のセンスの噛み合いにもよりますが、結構嬉しいはずです。
店員さんが「これ気にいると思うんですよ」と出してきてくれた物が、本当に好みのものだった時には、ちょっとした感動があります。
そんな、最近流行りの「体験型」サービスにもなりうるものなんですよねこれ。
おまかせ定期便は、ZOZOSUIT前提のサービスではない!?
おまかせ定期便では、顧客は個人データの他に「キレイめ」「カジュアル」「ストリート」から好みのファッションを選びます。
この大枠に沿ってアイテムが送られて来そうです。
カジュアルとストリートの違いが画像から伝わってこないのですが、そこは気にしない。
「取り入れたくないファッション」もアイテムごとに選べます。
例えば「首まわり」だったら、「クルーネックはイヤだ」、とか「Vネックはイヤだ」とかバツを付けていきます。
これはまさに料理のおまかせコースですよね。
「好きなもの」を事細かに聞くのではなく「嫌いなもの、食べたくないもの」を事細かに聞いておく。
好きなものを聞いてしまうとどうしても提案の幅が狭くなってしまいがちです。
意外だったのは、「サイズ感」を選べること。
小さめに着たいとか大きめに着たいなど。
ZOZOタウンは、「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」による「ジャストフィット体験」を謳った新ブランド「ZOZO(http://zozo.jp/pb/)」を展開しています。
「おまかせ定期便」は、ZOZOSUIT前提のサービスでは無さそうなのです。
(もちろんZOZOSUITがあれば、サイズ測定をしなくても詳細なデータを登録出来ます。)
私は「サイズは心の問題」であり、「正しいサイズは有るようで無い」という考えなので、サイズ「感」を選べるのは嬉しいですね。
さらに顧客の好みと販売員の提案のミスマッチを減らすキーになってきそうなのが、顔写真やSNSを登録出来ること。
これにより顧客の雰囲気をグッと掴みやすくなりそうです。
最後に、定期便のペースを「1ヶ月に1回」「2ヶ月に1回」「3ヶ月に1回」の中から選んで、住所と支払い方法を入力して、申し込めば完了です。
利用規約を読み込むと、やはり「送られてきた商品代金から返品された商品代金を引いた金額のみ」が決済代金となるようです。
返品ルールも「7日以内に申し出(最大で到着から14日間)」と、従来と同じです。
違うのは、返送料が無料ということ。
返品するのが前提のサービスだからでしょう。
ZOZOTOWNは月会費を払うプレミアム会員の返送料を無料にするサービス「ZOZOプレミアム」を既に終了しています。
これは返送前提のサービスとはいえ、最大で月1回だから大した負担ではない、ということなのでしょう。
ZOZOTOWNは運送業界の疲弊を原因として、返送料無料サービスを終了せざるを得なかったわけですが、これなら社会的な許容性もあるでしょう。
返送料が無料だったころは、一時期「ZOZOTOWNで注文しまくって気に入ったものだけを買えばオシャレになれるぜ!」みたいな方法が提案されたこともありました。
でもこの方法はモラル的に後ろめたいですし、何よりクレジットカードの枠を使ってしまうという問題もありました。
これはもう、そういうサービスなのだ、という安心感がありますね。
「おまかせ定期便」の問題点
「おまかせ定期便」の問題点は、「返品って面倒だよね」ということに対する手当が特段無いことです。
返品を一度でもしたことがある人は分かると思いますが、返品ってすごく面倒なんですよね。
一昔前はアパレルの返品はほとんど不可能で、通販に失敗したらあとはもうオークションなりで売るしかなかった…なんてことからするとめちゃくちゃ恵まれているわけですが、恵まれた環境に人は慣れてしまうもの。
「おまかせ定期便」はどうやら全身一式のアイテムが送られてくるようなので、その全てを買い取る、という人はほとんどいないと思うので、ほぼ必ず返品をすることになります。
またおそらく従来通り一週間以内に返品を申し出るわけですが、この作業を忘れたりすると、多数のアイテムを買い取らねばならず結構な痛手になるはず。
この返品の手間と、手続きを忘れてしまったときの手当が特段無いのがおまかせ定期便の難点と言えば難点になるかと思います。
まあこれについてはよほど悪質でなければ、日にちを過ぎても返品させてもらえるとは思いますけどね。
コーディネートの提案に自信のある人は販売員になってみては?
俺は洋服を自分で選びたいから関係がない、という人もいると思いますが、「販売員」サイドで「おまかせ定期便」に関わるという方法もアリます。
おまかせ定期便スタートに合わせて現在販売員も募集しているからです。
在宅ワークが可能!ZOZO販売員募集 - 株式会社スタートトゥデイ
全てWEB上で完結し、在宅ワークも可能のようです。
ただし当然選考がありますし、3日間の東京の青山で研修を受ける必要があるようです。
選考には「お題」が与えられます。
メンズの場合は
「40歳、男性、好きなブランド:BROOKS BROTHERS」
このような顧客を想定しコーディネート提案をする、というものです。
どうでしょうか?あなたは出来るでしょうか?
一瞬でコーディネートの提案がひらめいた、という方は販売員になってみても良いでしょうね。
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販売員の提案力をどこまで高められるか?
このサービスはどう考えても販売員の提案力が重要です。
この販売員の養成がどこまで出来るかが、成功の分かれ目となりそうです。
1コーディネートにつき600円、+成功報酬。
コーディネートを組むだけではなく、何故それを選んだか、軽く解説するライティングも課されます。
月に15日間、10件をこなすとして9万円+成功報酬、というモデルが提示されていますが、これが割に合うかどうかですね。
単価が低く、ほとんど報われないことが多いクラウドワーキング(ネット上で労働力を提供する働き方)としては、私はとりあえずこれくらいが限界じゃないかなとは思います。
個人の力量によると思いますが、普通のアルバイトくらい貰えるのはぶっちゃけかなり恵まれている方です。
タダ働き同然みたいな働き方をさせているクラウドワークも多いですから。
驚異的な販売力(つまり返品率が低い)を誇るスター販売員(月収30万円程度、つまりそれだけで食べていけるレベル)を育成出来れば、販売員サイドにとっても夢のある話になると思います。
あとは「この人が提案してくれたから買う」という信頼感を生むビジネスまで持っていけるか?
専属の販売員が付いてくれるのかわからないのでなんとも言えないのですが、そういう方向に持っていく方向性というのもあるのかなと思います。
このサービスは、あくまでZOZOTOWNという壮大なプラットフォームを使って、販売員が顧客のために真剣にコーディネートを考えてくれる、というのがキモだと思うのです。
だからZOZOTOWNはプラットフォームとしての立場に徹して、販売員と利用者の信頼関係構築を図るべきではないでしょうか。
要するに「セール品を売りさばいてくれたらインセンティブ」とか、そういうプラットフォームをただただ利する方向にもっていかないということですね。
プラットフォーム化するZOZOTOWN
最近は単に「洋服を売る」のではなく、様々なサービスが生まれています。
例えば earth music&ecology(アースミュージックアンドエコロジー)を運営するSTRIPE int'l(ストライプ インターナショナル)が提供するサービス「メチャカリ」。
月額5800円で、ストライプの運営するブランドの「新品」が借りられるサービスです。
一度に手元における点数は3点までですが、1ヶ月に借りられる点数は無制限。
返却時クリーニングなどの手間が要らないのもポイント。
気に入った洋服は、割引価格で買い取るか、60日間借り続けることで自分の物にすることも出来る、というサービスです。
送られてくるアイテムが普通に売られている新品であるという点、買い取りや借り続けることで貰えるなど「レンタル」と「所有」が隔絶されていない点などが既存のファッションレンタルサービスとは一線を画しています。
そして、何故返却時にクリーニングが要らないのか?というと、メチャカリは返却されたアイテムをクリーニングして再度貸し出すのではなく、ZOZOTOWNの古着販売サービス「ZOZOUSED」で中古品として販売してしまうのです。
ZOZOTOWNをプラットフォームとして、新たなサービスが生まれているんですね。
アパレル業界の新たな取組はこの「誰がアパレルを殺すのか」が詳しいのですが、ZOZOTOWN周辺でどんどん新しいサービスが生まれていることに何だかなあと思わなくも無いですね。
ちなみにこのストライプ、ソフトバンクと手を組んで、新しい通販サイト「STRIPE DEPARTMENT(ストライプデパートメント)」をスタート。
【ストデパ|STRIPE DEPARTMENT】大人を楽しむファッション通販
こちらはメチャカリとは異なり、女性向けのやや高級なブランドを揃えているのですが、これまでの通販サイトと異なり
・3着まで「試着」の申込みが出来る(気に入った物以外は送料無料で返却可能)
・「Personal Styling」、パーソナルスタイリストが顧客の好みに合わせてコーディネートや商品の提案をチャットで行う
・その他24時間チャットで質問回答を行う
という、おまかせ定期便と重なるようなサービスを展開し始めたのです。
実はこのチャットによる接客は、ZOZOTOWNが数年前に撤退したサービスでもあるので、どこまで上手くいくのかは懐疑的ですが、アパレル通販サイトがどんどん「提案力」を持ち始めています。
アパレル業界による「集団授業」から「個別指導」の時代へ?
ファッション雑誌を中心としたアパレル業界から消費者へのアプローチは、いわば「集団授業」のようなものでした。
学校の授業と同じく、上達には能動的な態度、つまり「ファッションを勉強する」みたいな姿勢が大なり小なり求められます。
これってじつはかなり面倒なんです。
「勉強」ですから。
面倒だからそんなんやってられねー!っていう人を少なからず生んでしまいます。
そもそもその授業が自分にあっていない可能性もあります。
小林直子さんの「わたし史上最高のおしゃれになる!」などは、服選びのエッセンスが散りばめられた実に「教科書」的な本だと思うのですが、読み手に「この本でファッションを勉強するんだ!」という能動的な態度を求める本だと思います。
(いつかこれをメンズに応用したらどうなるか?という話もしたいのですが)
もっと大きな視点で見ても、ファッショントレンドもそのほとんどは、「ファッションがあまり得意でない人達」を置き去りにして展開されます。
(実はトレンドって、ファッションを得意とする人たちだけが先行するためにあえて難易度が高くしてあるものも少なくありません。)
どのような方法も「付いていけない人たち」を少なからず生み出してきました。
さらにはその付いていけない人たちの弱みにつけ込むような、あまりにもイケていない服を売りつけるサービスもわんさかありました。
個性個性と言いつつ、個人を大切にしてこなかったアパレル業界も、手取り足取り、個人に徹底的に寄り添った「個別指導」の時代に入ったのかなと思います。
「おまかせ定期便」はファッションの入口教育としての役割も担えるだろうし、ファッションに疲れてしまった人への対処療法的な役割にもなり得ると思います。
「それじゃあ本当のオシャレにはなれない」という人がいても、「本当のオシャレなんてそもそも目指してないです」と言われればぐうのねも出ません。
「実際に物を送ってくれる」というこのサービス、販売員の提案力、どんな物が送られてくるのかがキーになってくるのですが、おそらくYouTuberの方々あたりが「『おまかせ定期便』使ってみた!」などの動画をどんどん上げてくれる気がするのでその経過を見守りたいですね。
おそらく近い将来、もっともっと革新的なサービスが生み出されて、洋服を選ぶなんてことに時間を使うことは無くなるはずです。
そんな日が来るまで、微力ながらこのブログも頑張っていきたいですね!
ちょっとここのところ記事の更新が滞ってしまいましたが、春モノをどんどん紹介していきたいと思います!
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