無印良品のMUJILABO(ムジラボ)後半戦となる第三弾&第四弾、トレンド感溢れるニットやダウン、コート、そしてひっそり単独リリースのフリースカーディガンは?ラストを飾るアイテムは…!?
ムジラボは、昨年大幅にリニューアルされた無印良品の実験的かつ実質的な上位ラインです。
服は本来たくさん持つ必要はない…という考え方から、ユニクロUなどと異なり毎月少しずつアイテムがリリースされるという小規模なコレクションが特徴。
先の第三弾、第四段のリリースを持って今季ムジラボは完成となりました。
かなり実験的な後半戦となったムジラボ、各アイテムをレポートしたいと思います。
ムジラボも遂に本格的にダウンに参戦!?インナーダウンとして使えるか
少数精鋭となったムジラボの第四段の目玉はなんとダウン!
ポケッタブルプルオーバー、ダウンコート、ポケッタブルリブパンツと本格的にダウンをコレクションに組み込んできました。
さてこれがどんな出来か…。
見ていきましょう。
軽量オーストラリアダウンポケッタブルプルオーバー
どこかディティール面でムジラボ2018AW第二弾のプルオーバーシャツを思わせるプルオーバーダウン。
インナーダウンとして、今回のダウンラインナップでも現実的に使えるものになるのではないか…?と思っていたのですが…。
インナーダウンとは、コートの下に着れるくらい薄手のダウンのことで、ダウンの持つ暖かさをコートスタイルに付与出来るというもの。
5,6年前から急速に街着スタイルにも広がりました。
ただ、ちょっとこれはインナーダウンとしては使えないかな。
というのも、これを着て、上にコートなどを重ねると分かるのですが、プルオーバーのためかお腹のあたりに空気が入ってしまって、ポコッとお腹が出ているように見えかねないのです。
空気の入り具合によるので、常時ってわけではないのですが、フルジップに比べるとそういう風になりやすい。
非常に柔らかい、ダウンによってふわっとした軽い質感を作る生地ですから、余計にそうなりやすいのだと思います。
もうちょっとハリ感のある生地を使えれば、その欠点を抑えられたと思うのですが…。
これではインナーダウンとして一番使うシチュエーションで台無しになってしまいます。
またインナーダウンは温度調節がしやすいのがメリットなのですが、いちいち被って着なくてはいけないプルオーバータイプだとそのメリットを活かしづらい。
せっかくポケッタブル(畳んで小さくしてカバンなどに仕舞うことが出来る)仕様なのに、それを活かしづらいのかなと。
これが安ければ、冬の部屋着用にアリですが、定価約1万円(9990円)ですから、ちょっと今のままでは手が出ないですね。
良作の少ないインナーダウン…無印良品通常ラインに惜しいアイテムを発見!?
インナーダウンで良いものを毎年探しているんですが、なかなか無い…。
インナーダウン良いもの無いですか?と今年もよく聞かれるのですが、比較的値段の手頃なものだとなかなか無いんですよね。
インナーダウンは、出来るだけスタイリッシュに見えるようにダウンパックを内側(身体側)に配置して表面にモコモコ感を出さないものが理想。
こうすることで、コートに合わせた時の着ぶくれ感も軽減されます。
(さらに言えば、着ている人の多いユニクロのウルトラライトダウンとも差別化出来ますよね…。)
できればダブルのジップタイプであるとさらに良し。
素材は、ウールのコートと素材的な相反性を持ち、アクセントになってくれるナイロンなどの無機質なものが良いですね。
https://wear.jp/snapitem/25484815/
ただこれが殆ど無い…。
大体ボタンタイプで、ダウンパックは外側、という物が多いんですね。
去年とあるブランドの人にちょろっと聞いた話だと、やっぱりユニクロとの競争になるからやりたくないとのこと。
ちょっと変えるだけで、全然違うものになるのになあ…。
で、実は惜しいものが無印良品の通常ラインにあるんです。
これはインナーダウンとしてではなく、コートとして出されているものなので、着丈が長過ぎるのですが、ダウンパック内側、ジップタイプ(しかもダブルジップ!)とインナーダウンの要件を揃えている。
着丈が長すぎることだけが惜しい…。
ロングコートと合わせるにしても、やっぱりちょっと着丈が長すぎると思います。
これを最初からインナーダウンとして作ってくれていれば、もうちょっと価格も安く、値段からすればかなり良いものが出来たんじゃないか!?とひたすら残念。
無印良品のインナーダウンを想定して作られたもの達が、ユニクロとあまり差別化出来ていないだけに本当に惜しいですね。
でもこういうものが作れるわけで、来年あたり真に使えるリーズナブルインナーダウンが登場するのを期待したいところです。
オーストラリアダウン撥水コート
今季の無印良品通常ライン、ムジラボ双方ともにオーストラリアダウンが使われているそうで、「フィルパワー750」をウリにしています。
フィルパワーは、「1オンスのダウンが何立方インチに(ぎゅーっと押されたダウンが自身の回復力で)復元するか」を数値化したもの。
「550を超えるとプレミアムダウンだから、700は凄いんです!」
とフィルパワーが数年前から各メーカーのダウン性能の謳い文句になっていますが、今はほとんどのダウンがフィルパワー700以上を謳うようになっているので、そこまでウリにならないのでは?と思っているのですが…
どちらかと言うと今季無印のオーストラリアダウンシリーズは非常に軽いのが特徴になっています。
ふわふわとしたダウンの膨らみ感がダイレクトに感じられる、そういう生地を使っているからだと思うのですが、この生地を含めた軽さは非常に気持が良いものになっています。
正直この着心地は、もっと上の価格帯のものとも十分勝負出来るレベルにあると思いますね。
ただ、ムジラボのダウンコートはデザインが非常に難しいですね…。
デザイナーとしてはムジラボラインでスタイリッシュなダウンを出してくる気は無いのかなと言う気がするのですが、それにしたって難しい。
柔らかな膨らみ感にこのロングの丈感だと、ベージュだと何だかレディースダウンのよう、ブラックだとベンチコートのようで…
メンズがサマになるそれではありません。
確かに今季はダウンのボリューム感とトレンドのビッグシルエットをマッチさせた、野暮ったいくらいにボリュームのあるダウンが一部トレンド化しているのですが、それを考慮してもこの形は使いにくいと思います。
後述するコート同様、ラボの「実験」的性質が強く出てしまっているアイテムだと思いますね。
後述する無印良品通常ラインのダウンジャケットが良い出来でしたし。
セレクトショップの中価格帯のダウンジャケットにしても再三お伝えしているようにポイント還元などを上手く使えば、実質このダウンコートと同じくらいの値段で買えてしまうことを考えると、ちょっとオススメは出来ないですね。
究極のシンプルダウンジャケットは無印良品通常ラインにアリ
先日お伝えしたように、ムジラボダウンと同時期に発売された無印良品通常ラインのダウンジャケットがかなり良い出来でした。
まさにシンプルイズベストなフード一体型のブルゾンタイプ。
ダウンパックは内側にして、モコモコ感は極力抑え、かつ今季無印のオーストラリアダウンシリーズの軽さは最大限に活きる生地。
キモとなるフードの立ち上がりも十分。
これは今季無印良品の冬のベストアイテム候補と言って良いでしょう。
ムジラボのダウンシリーズが正直使いにくそうなものばかりだったので、こういうものが出てくれたのは救いですね。
こちらは実店舗の方でもかなり在庫が少なくなってきました。
軽量オーストラリアダウンポケッタブルリブパンツ
ダウンをパンツにも出来たらきっと温かいはず…というある意味夢のようなアイテム。
これも他のオーストラリアダウン同様、非常に軽い着心地です。
これは冬非常に温かいでしょうね。
ただまあ画像を見て頂けると分かると思うのですが、ファッションアイテムとしてはちょっとキツイ。
パンツで最も大事なシルエットがどうしても犠牲になってしまいます。
一応テーパードがしっかり効いていたり、裾上げ出来ないことも考えて丈を短めに設定したり
細かいところだとポケット周りなんかもよく考えられているんですが…。
ファッション的にこれを成立させるのはかなりシンドいですね。
撥水ナイロンドロップショルダーコート
おそらく今季のムジラボ唯一?となるコートタイプのアウター。
トレンドのビッグシルエットアウターです。
うーん、これはかなり難しいシルエットです。
アームはかなり太く、身幅もかなり太く、すべてのサイジングが大きく作られており、また生地もバリバリっとしたハリ感の強い、落ち感の無いタイプ。
メリハリも全く無いですし。
着丈も中途半端なので、モッズコート的なゆるさの表現もできないという。
よく見るとモデルも全カラーでエリを立ててシルエットを誤魔化すように着ていますし、これは体躯がある人でもちょっと難儀しそうなタイプ。
普通体型の人はまずスルーしておいたほうが無難でしょう。
昨年ユニクロUで発売されたブロックテックモッズコートを思い出させる難しいアイテムです。
普通にコートを作っても面白くない時代といえばそのとおりなのですが、ドロップショルダーのみで、ボディ自体はもうちょっと細く作ってメリハリを付けた方が良かったんじゃないかな…。
これもまたラボの「実験」的な色彩の強いアイテムで、ベーシックなコートの範疇にあるものでは決してありません。
発売時は何故かオンラインショップでも着丈や身幅などのサイズ詳細が出ていなかったのですが、これは後になって改善されました。
それを見てもやっぱり難しいわけだと思いますね。
トレンド感溢れるシルエットのムジラボリバーシブルニットVS素材感の無印良品ヤクウールニット
前でも後でも着れるタートルネックセーター
これかなり面白いんじゃないの?と楽しみにしていた、その名も「前でも後でも着れる」セーター。
これぞ本当のリバーシブル!?
一面は無柄、もう一面はケーブル調と、あくまで「無理のない」範囲でリバーシブルを実現させています。
畦をネック部分で両面採用するとか、表裏の切り替えをデザインにしてしまうと、それはもうよく考えたな~、という工夫が凝らされています。
これね、本当にどちらで着ても良いというか、「変わったものを着ている」という感じはほぼ無いです。
というわけでラボが打ち出した新しいリバーシブルの「実験」、とりあえず成功と言って良いのでは?
そしてこのニット、その最大のウリは実はこのリバーシブル仕様ではありません。
肩が落ちているのは画像からも分かると思うのですが、 腕を広げると分かる、かなりワイドな身幅になっており、スソまでふわっと広がって見えるようなデザイン性の高いシルエットになっています。
※私が計測したところ、S~Mサイズは平置きで65cmほどあります。
着丈はどこから測るか難しいのですが、これまた65cmほど。
いかに身幅が広く作られているか分かると思います。
万人が似合うシルエットでは無いですが、1枚で着ても十分サマになるというこの価格帯では珍しいニットになっています。
年末コートを脱いで食事なんかをする機会が多いと思うのですが、そんなシーンでも力を発揮してくれそう。
そのかわり…と言ってはなんですが、たっぷりと生地を使っているので、ポリエステルとウールが半分半分みたいな素材構成になっています。
これをすべてウールで作ると、1万円台中盤くらいになってしまいそうなので仕方ないですかね。
そして、このニットと見比べてほしいのが無印良品通常ラインのヤクタートルネックセーター。
ヤクは近年目立ち始めた、軽く、ふわふわとしたモヘアのような質感で、ウールとは全く違った特有の着心地が味わえる高級ニット素材。
近年カシミアが高騰しているようですが、このヤクもまた高騰しているようですね。
そんなヤクを贅沢にも100%で使用したこのニット。
昨年驚かされたアルパカ100%のニットのような素材の良さを十分味わえるアイテムです。
セレクトショップオリジナルの同価格帯のヤクを使用したニットは、どうしても化繊混紡になってしまいますから。
こちらはムジラボと違って、アームなども細く、細身のブルゾンのインナーなどにもしやすいタイプ。
薄手なので着ぶくれ感なく、アウターの保温力をアップすることが出来ますよ。
ひっそり発売されていたフリースカーディガン
第4弾リリース後に単独でひっそりと発売されていたのがフリースカーディガン。
あたたかファイバーは、無印良品が毛布やシーツなど寝具としてシリーズ化しているもので、これを「着る毛布」というコンセプトで服に落とし込んだのがこちらのアイテム。
これあったら深夜の執筆作業も捗りそうだな…と思って買ったのですが(いやほんとこの季節から寒くて辛いのですよ…)、外でも全然着れるクオリティ。
タートルネックなどを合わせたらもう普通に外着ですよ。
(そもそもそういう風に作っているわけですが…)
長めの着丈で洒落感ありますし、ゆったりとした見た目ながら、生地が柔らかい落ち感がありますし、アームホールは割と細めに作っているので、ダボダボしすぎることもなく。
濃いネイビーがベロアのような…という言い方も大袈裟でなく、光によって明と暗を行き来してくれて、それが結構深みある色合いなんですよね。
これかなり良いです。
今回紹介するアイテムでは一番良いかも?
一応これもリバーシブルで、もう一面はポリエステルなのですが、こちら側で着る、ということはあまり無いです。
ただこのポリエステル面が非常に滑らかなので、フリースを表にした時、着ていて気持ちいいんですね。
またポケットの中までフリースで作られているので、手を入れた時に温かいし気持ち良い。
ポリエステルを表面にした場合のポケットも片面はフリースにしてあって、手を入れると温かいなど、よく考えられています。
これでこのまま寝たい…けどもったいない!
ちゃんとパジャマも寝具ラインにはあるようです。
ムジラボのフリースカーディガンは、1枚で着たときのデザイン性にこだわって作られているので、コートの中にライナーのようにして重ね着するにはちょっとボリュームがありすぎて着膨れしそう。
それが1枚で着た時にちょうど良いボリューム感になっているんですけどね。
コートの防寒性を高めるインナーにしたいなら、無印良品通常ラインにある「あたたかファイバー着る毛布ジップアップベスト」がオススメです。
冬の終わりに紹介したアイテムですが、手頃な値段で防寒性を高めてくれる冬の味方。
新色のチャコールグレーがかなり良い感じです。
こちらはまた別の記事でも紹介したいなと思います。
フリースといえばユニクロ、というイメージがありますが、無印のフリース、かなり良いです。
で、やっぱりコレとの比較になってくるんですが…
ユニクロU2018AW一番話題になったアイテム、フリースカーディガン。
うーん、やっぱりムジラボのフリースカーディガンのほうが、圧倒的に着ていて気持ちいいですし、シルエットも落ち感があってまとまりが良いんですよね。
防寒性は大粒ボアのユニクロUの方がありそうですが…。
値段が上なので、フェアとは言えませんがムジラボの方がやっぱりトータルで見て服として上ですね。
さらにさらに追加で最近プルオーバータイプも出たのですが、こちらはオススメ度は大幅に下がります。
カーディガンが良すぎたのもありますが、この形だとあたたかファイバーのリラックス感が上手く表現出来ないのです。
インナーとしてもイマイチですし。
ちなみにベージュは、画像だとピンクがかってかなり女の子っぽく見えますが、実際は普通のサンドベージュといった感じで、ピンク味はそんなに感じません。
さて、ムジラボもおそらくはこれでラストになったのですが、後半戦はちょっと万人が似合うような、良い意味での無印良品の上位ラインといったアイテムは無かったですね。
ムジラボっぽいアイテムが「ムジラボまんま」で質だけ劣化させて無印良品通常ラインにあってもイマイチですし、両ラインがかなり乖離・差別化がさらに進行してきた感はあります。
ムジラボには全体の質を向上させる役割も期待したいところ。
来春は一体どうなるのか、楽しみですね。
ムジラボは取扱店をさらに減らしたのがちょっと不満ですが…。
フリースカーディガンにしても、ちょっと良いアイテムに限ってタマ数と取扱店舗が少なすぎるんですよね。
年内まだまだ無印良品通常ラインのアイテムもさらに紹介したいと思うので、そちらもお楽しみに。